食べものをつくる会社にとって悩ましいのが「はしっこ」です。

大須ういろでは、「安全安心でおいしく美しいものを」と日々ういろづくりに向き合っています。きれいな商品に仕上げようとすると、形がよくない先端部分はどうしても省かざるを得ません。この「はしっこ」を、このまま捨て続けていいのだろうか。たとえば、これを工場直売のお得な商品として販売する方法も考えられます。しかし、作り手として美しさというクオリティーを落としたくないという思いもあります。また製造途中では、生地を蒸す際に包装パックの角にシワが寄ったりするなど、商品として成立しないものも出てきます。味わいは商品とまったく同じなのに、形が違うだけで廃棄物になってしまう。
それは本当にもったいないし、フードロスは地球温暖化につながるため環境によいことではありません。今、社会全体で目指しているSDGsの観点からも、私たちは廃棄の問題について思い悩んでいました。

そんなとき、取引業者を通じて紹介された会社から、ひとつの提案を受けたのです。「ういろで紙を作りませんか」と。紙づくりを手がけるのは、大阪府にある山陽製紙。循環型社会への貢献を目指し、不用紙の再生やオーダーメイド紙の製造などを行う製紙会社です。私たちはここと連携し、ロスになったういろを活用して紙をつくることにしました。

実は、この製紙会社にとっても、ういろでの紙づくりは初めて。リンゴやミカン、コーヒーなどを使ったことはあるそうですが、ういろのような「粘り気」のある素材は初挑戦でした。懸念されたのは、熱を加える製紙工程で、この粘り気が糊のようになって機械に引っ付いてしまわないかということです。

製紙工場では、次のような流れで紙がつくられます。パルパーという大きなミキサーにパルプ(再生紙)とういろを入れて攪拌し、繊維をばらばらにほぐします。

その繊維は水を加えて洗い、ゴミなどを除いたら、まんべんなく広げてシート状に。水分を絞り、6台の大きなローラー状のアイロンの間を通しながら熱で乾かします。

当初心配されたアイロンへの付着は問題なく無事に完成。できあがった紙を広げると、きなり色の紙面の中で、透け感のあるところがういろ、粒々した点が小豆や栗などです。和紙というより洋紙のような質感に仕上がりました。

こうして生まれたのが「ういろペーパー」です。
まずは、大須ういろの定番商品である棹ういろの2本入、3本入りの箱に用います。今後は順次、掛け紙などに活用の幅を広げていきたいと考えます。

廃棄をめぐるフードロスへの対策は、まだ始まったばかりです。私たちには課題や問題がまだたくさんあります。廃棄を減らすよう、より一層努めるとともに、捨ててしまっていたものを生まれ変わらせることも選択肢にしたいと考えます。

安心して楽しめる、おいしいういろをつくる。
「もったいない」を減らすフードロス対策に取り組む。
大須ういろは、どちらも大切にして企業活動を進めていきます。