魅力的な目的地になるために。内なる化学変化を起こし、本店のあるべき姿を目指す。
大須ういろ創業の地、名古屋市中区大須。江戸時代初期から門前町として発展し、今では神社仏閣や昔ながらの老舗から最新のサブカルチャーの店舗まで並び、多彩な表情を見せる商店街が広がっています。
歴史あるこのまちで、2021年、私たちは新たな取り組みを始めました。それは、当社の原点であり、お客様との大切な接点である大須ういろ本店を「魅力的な目的地」にすること。その一歩として、販売する方法や商品に変化をつけながら、お客様が今何を求めているのかを見極めようとしています。そして、それが叶う場づくりを目指していきます。
まちが一層賑わう週末、本店では通常とは異なる販売員が店頭に立ちます。土日のうちどちらかは営業部、もう一方は製造部のスタッフが販売を担当するのです。
営業部は、行き交う人々にういろを試食販売。日頃の仕事柄、最初から数字を意識しました。一日の通行人数、試食をしてくれた人数をカウントし、その割合や週ごとの増減も管理。売上も追求します。
「自分で販売してみて、わかったことがいろいろある」と上野康二・営業部長は話します。
地元の人の中には、身近すぎて食べたことのない方や、ポジティブなイメージを持っていない方も結構いらっしゃいました。しかし、「ういろとは何か」から伝え、試食をしてもらうと「おいしい」と笑顔に。お客様の反応や声に直接ふれる貴重な機会になっています。
「営業部の社員は週替わりで店頭に立ちます。そのため、“前の週・前の担当者よりも売上を上げたい!”とそれぞれが考え、いい意味でライバル心に火が付きました。結果的に売上は徐々に伸びていき、試食販売を始めて半年ぐらい後には、当初の3倍に増えたのです。これほど評価をいただいたのもうれしいですが、お客様とのコミュニケーションを通して商品の良さを再認識できたのも大きかったです」と上野部長は強調します。
一方、製造部は、その日限定の新商品として考案した、できたての生菓子を販売しました。
「普段手がけるういろは、お土産や贈答品としてのご購入を前提にしているため、日持ちや形状などクリアすべきハードルが多々あります。週末限定のポップアップでは、そうした概念を取り外し、自分たちが“おいしい”“食べてほしい”と思うものだけを提案しました」。そう梶亜津紗・製造部係長は語ります。
普段ならどんなに味や品質がよくても価格や生産工程上の面から使いづらい材料も、選択できます。真空パックにしなくてよいため、自由な形に仕上げることもできます。例えば、栗を丸ごとひと粒使い、それを引き立てる味わいとしてアールグレイ、カフェモカ、ほうじ茶、きなこなどと組み合わせたり、愛らしいカヌレ型の鮮やかなういろを作ったりとこれまでにない味わいやスタイルを実現しました。告知はInstagramで行い、双方向のコミュニケーションにも取り組んでいます。
「日頃、商品開発する中でのアイデアや知識のストックを生かし、おいしいお菓子をかたちにすることができます。販売はお客様との距離が近くて楽しい上、よい意見もネガティブな意見も聞けることがいいですね。商品をより魅力的にするヒントと出合えます」と梶係長。
この取り組みが始まり、社内では横のつながりや情報共有が強化され、一体感もより深まりました。社員間の対話、お客様の声、蓄積しているデータをもとに、ハード・ソフト両面からの魅力的な目的地づくりの模索は今後も続いていきます。大須ういろ本店のあるべき姿にたどり着くために。