どうしたらもっとおいしくなるか。召し上がる人を思い描き、より良いお菓子づくりを。
—和菓子職人を目指したきっかけは何ですか?
高校生の時、担任の先生から近所においしい和菓子のお店があると聞き、実際に食べてみたら「こんなにおいしいんだ!」と感じて…。それまで和菓子にはあまり馴染みがありませんでしたが、一気に興味がわいたんです。それで卒業後の進路は、製菓の専門学校の和菓子科を選びました。
—お菓子づくりにはもともと興味があったのですか?
母が自宅でお菓子づくりをしていたので、私も自然とクッキーやケーキなどをつくるようになりました。そういえば、小学校のクラブ活動でも“お料理クラブ”に入っていたことがあります。料理といっても、クッキーなどの焼き菓子も手作りしていましたね。
でも当時はお菓子といえば洋菓子のイメージで、和菓子にはふれる機会がほとんどなく、作るのもハードルが高そうでした。それを専門的に学び、今は仕事としているわけですよね。
—大須ういろではどのような業務を担当しているのでしょう。
製造をメインに、オンライン限定商品や本店でのポップアップ(週末限定での試食販売)商品を手がけたり、商品開発のテストを行ったりしています。
商品開発では、“新しい味”への挑戦と“ういろらしさ”の両方を大切にするよう心がけています。ただ、試作する場合と、商品として機械でつくる場合とでは、熱の入り方や蒸気の当て方などが異なるため、まったく同じ味や香りになるわけではありません。そこを調整ながら納得のいくものを目指しています。自分が納得でき、会社も納得でき、お客様にも満足いただける。それが理想的です。
歴史あるういろですから、お客様は“定番”を求めている場合も多くて難しいところなのですが、基本を守りながらも新しいチャレンジを続けていきたいと思います。
—やりがいを感じるのはどんな時ですか?
お客様の声や感想を直接聞いた時です。本店のポップアップでは店頭で試食販売を行っていて、「おいしいね!」とか「この前のお菓子がおいしかったからまた来たよ」と言ってもらえるとうれしいですね。
また、ういろと蒸しパンの2層仕立ての商品を販売した時は、通りすがりの方が足を止めて見に来てくれました。職人が販売する機会は少ないので、反応をダイレクトに知る良い経験になっています。
—和菓子職人として大切にしていることは何でしょう。
「おいしいお菓子をつくりたい」という気持ちです。どうしたらもっとおいしくなるだろう?、こうしたらおいしくなるのでは?とより良くなる問いかけをいつも忘れずにいたいと思っています。製造の仕事はブレがないよう淡々と進めがちですが、決して“作業”にせず、食べてくれる相手がいることを念頭に置いて向き合いたいです。それが商品の、そして職人としての向上につながると思います。
—今後、挑戦してみたいことは何ですか。
ういろは「お土産」の要素が強いですが、地元の人の日常的な「おやつ」として気軽に食べてもらえる商品づくりをしたいです。
地元だからこそ、ういろはイメージが固まっているし、勘違いされていることもあると感じています。というのも、試食の際に「ういろってこんなにもっちりしていたかな?」とか「これまで冷蔵庫に入れていたわ」という声を聞きました。ういろは米からできているお菓子なので、ごはんを冷蔵庫にしまっておくと冷えて固くなるように、ういろも固くなってしまいます。そうした冷やしたういろを召し上がると、おいしくないから買わない、ともなりかねません。
お米にいろいろな銘柄があるように、ういろは使う米粉やメーカーによって味わいは様々。作る工程はシンプルなのに、実に奥深いものです。それぞれが工夫してつくっている、ういろのおいしさや楽しみ方を改めて伝え、普段から親しんでもらえるようになるといいなと思います。
—最後に、「大須ういろ」という会社の良さ・好きなところを教えてください。
私は産休・育休を経て時短勤務で働いています。会社は「仕事は後からでもできるから、今はお子さんを優先して」といって柔軟に対応してくれます。こうした温かさや子育てへの理解をありがたく感じています。ほかを見聞きしたところでは、出産を機に仕事を一旦辞める職人が多いようですから…。大須ういろには働きやすい環境が整っているので、勤務時に集中して和菓子づくりにしっかりと取り組みたいと思っています。
プロフィール
役職:製造部係長、開発担当
仕事内容:商品開発
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