バイオマス資源としてエネルギーを生成。化石燃料を使わないトマトに生まれ変わる

ういろをつくる過程では、食品残さや加工残さなどの廃棄物が生じます。それらは専門事業者を通して、“ごみ”として焼却するのが従来の対応方法でした。しかし、焼却には多くのエネルギーを使い、CO2も排出します。環境への負荷を減らすため、燃やさずに活用できないだろうか。私たちは食品メーカーとしてあるべき行動について考え巡らせていました。

一つの答えが “バイオマス資源”としての再利用です。愛知県半田市にある株式会社ビオクラシックス半田から提案を受けたのが始まりでした。まず、食品残さを微生物の働きで発酵させてメタンガスをつくりだし、電気、熱、CO2のエネルギーに変換します。そのうち、熱とCO2を、太陽光利用型ハウスが並ぶバイオファームに供給。熱はハウス内の熱源に、CO2は光合成のために利用して、化石燃料を一切使用しないミニトマト「HANDAミラトマト」を栽培します。

ミニトマトの生産を担うのは、地元半田市の株式会社にじまちです。再生可能エネルギーで栽培に活用するとともに、ICTを利用した複合環境制御システムで生育に最適な環境を常につくりだしています。スマート農業と熟練した技術との相乗効果で生まれた「HANDAミラトマト」は、鮮やかな赤色でぷりっとした丸玉。平均糖度は9~10度で、糖度8程度以上をクリアした“高糖度トマト”に分類されます。

「ういろペーパー」に続く、サステナブルな未来に向けた取り組み

ういろがミニトマトに生まれ変わることができるのか。当初は、大須ういろの工場で生じる全食品廃棄物のうち10%程度の量から、試みを始めました。メタン発酵への有効性を確かめながら進め、2024年5月時点では、全食品廃棄物のうち約50%をバイオ資源として活用しています。今後もこの取り組みを継続し、さらにバイオ資源として活用する割合をより高めていきたいと考えます。

一方で、コストという課題があるのも事実です。メタン発酵施設に回収されるまでは、工場内で冷蔵保管が必要な食品残さもあり、管理面での労力もかかります。ただ、食品廃棄物の問題は、大気汚染や気候変動などにつながると警鐘が鳴らされています。SDGsの目標12では「つくる責任つかう責任」、ターゲット12.5では「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」と設定されているように、食品メーカーには喫緊の対応が求められ、脱炭素やサーキュラーエコノミーの視点も重要です。

ういろの“はしっこ”を利用する「ういろペーパー」に始まった、大須ういろの持続可能性に配慮した取り組み。食品ロス対策に続く、食品残さの有効活用により、未来に向けてさらなる大きな一歩を踏み出しました。