—和菓子職人を目指した経緯を教えてください。

大学では電子工学科を専攻し、卒業後はインフラ系の仕事に就いた一方で、スイーツが好きであちらこちら食べ歩き、和洋菓子店めぐりをしていました。新しいお店ができると行ってみたり、京都に足をのばしたり。自分でお菓子をつくるようにもなり、こういう仕事もあるよなと思い始めました。製菓に興味を持ちながら、違う業界で働いていることに疑問を感じ、思いきって関西で菓子メーカーに転職します。その後、名古屋に戻ってきて大須ういろに入社しました。

—大須ういろではどのような業務を担当していますか?

商品の包装に始まり、ひと口ういろや棹ういろに関わり、今はウイロバーや季節のういろのカット・パック・箱詰めといった加工に携わっています。今、難しいと感じているのはスタッフのマネジメントです。パートさんが40〜50人いて、その日の製造スケジュールに合わせ時間帯によって移動するため、どうしたら指示を適切に伝えられるかを考えています。もし分からないことがあれば気軽に尋ねてほしい反面、自ら判断してもらいたいと思う場面もあって…。パートさんたちが戸惑うことなくスムーズに対応できるような方法を検討中です。また、皆をどのように一つにまとめるかというのも課題で、チームとして一体となり、時間を有効に活用し、生産性を向上させていきたいと考えています。

—やり甲斐や喜びを感じるのはどんな時ですか?

街なかで、大須ういろの紙袋を10代とか20代の若者が持ち歩いている姿を見かけると、思わず笑顔になりますね。ういろというと、年配のお客様が多いイメージが強いので、若者も「食べてくれている!」と実感できてうれしいです。

—和菓子職人として大切にしていることは何ですか?

常に、お客様目線に立つことです。きれいに仕上げて「おいしそう!」と思ってもらえるように努めています。たとえば、ういろはお米を原料としているので、商品になった時にお米の一部が点々と見えてしまうこともあるんです。食べ物だから召し上がっても健康に何らかの影響を与えるものではありませんが、ごく小さなかけらが見えると、完璧な美しさとはいえない気がするのです。手間を惜しまず、出来る限り美しく仕上げて、よりおいしそうなういろをお届けすることを大切にしています。

—改めて、ういろの魅力は何だと思いますか?

やはり、食感ではないでしょうか。お米に由来する、もちっとした食感が醍醐味です。ずっと以前に食べたういろの記憶をたどると、今ほどのもちっと感はなかったような気がします。歴史ある商品ですが、昔とまったく同じではなく、より良く変わってきていると思います。

—今後やってみたいことは何でしょう。

工場では、長い年月、稼働してきた機械を少しずつ入れ替えていて、導入した機械での製造方法を確立していこうとしています。操作性ひとつをとっても、ダイヤル式からタッチパネルに変わるなど使い勝手が違います。ういろの製造では、真空パックする時間や金型の厚みなどを従来から変更しました。スムーズに使えて、より良い商品をつくれるように、新しい機械に対応したマニュアルの作成を進めていきたいと考えています。

—もしこれから和菓子職人を目指すとしたら、どのような人が向いていると思いますか?

おそらく一般的には、集中力のある人、ストイックな人といえそうですが、僕は好奇心のある人が向いていると思います。和菓子は伝統を大切にしつつ、時代に合わせて変えていかないと取り残されてしまうかもしれないので、和菓子づくりには挑戦が求められます。そのチャレンジを続ける原動力となるのが好奇心だからです。自分にその仕事が向いているのかも、どうしたら目指すお菓子をつくれるのかも、行動してみないと何も分かりません。いろいろやってみよう、チャレンジしてみたい…興味を持って試行錯誤して、自分で答えを見つけることが大切だと思います。

—最後に、大須ういろとはどんな会社だとお考えですか?

アットホームでやさしい会社だと思います。役職を問わず誰とでも気兼ねなく話しやすい雰囲気がいいですね。一度辞めて戻って来た人を迎え入れるような温かさや懐の深さがあり、働いていて“人”として大切にされていると感じます。

プロフィール
役職:製造部課長
仕事内容:製造全般