「ういろ」と「餡」の黄金比を求めて。辿り着いた、もっちり感を楽しむ「餡ういろ」
「こし餡」か「つぶ餡」か。それは和菓子を愛する人にとっても、作り手にとっても、悩ましい問題です。
大須ういろが、この“餡問題”と向き合い、なおかつ「ういろ」との理想的な関係を追い求めて世に送りだしたのが「餡ういろ」です。ひと切ずつにカットしたキューブ状のういろから構成される棹タイプの商品で、一つひとつの中に餡を包み込んでいます。
ういろの味は「白」と「抹茶」。商品開発では、この白・抹茶のういろと餡をめぐり延々と議論が続きました。やはり、「こし餡」「つぶ餡」の壁が立ちはだかります。何を基準にどちらを選ぶのか。糖度はどれくらいにするか。それにはどんな小豆を使うのか。「ういろ」との比率も妥協はできません。ベストな餡の量を見つけ出すため、8、9、10、11と1グラム単位で調整しながら試作しました。それは、いつ終わるとも知れない長い道のりでした。
当初、私たちが思い描いたのは、「抹茶ういろ+つぶ餡」「白ういろ+こし餡」という組み合わせ。「抹茶ういろ」の緑色には、「こし餡」の淡い紫がかった色みは合わないのではないだろうか?そうした色みの観点から「つぶ餡」を包んだところ、抹茶ういろの存在感が少し弱いような印象を受けました。そこで、「抹茶ういろ+こし餡」「白ういろ+つぶ餡」に。「つぶ餡」と組み合わせると、味は良いのですが、その特性である“つぶ感”が「ういろ」の“もっちり感”を妨げてしまう気がします。
色、味、食感、全体のバランス‥議論は時に堂々巡りをしつつ、半年以上に亘って検討を重ねました。その結果、決定したのが「抹茶ういろ」「白ういろ」ともに「こし餡」という組み合わせです。最終的に、“ういろ屋”としての本質を守り、ういろ特有の食感を楽しめることを最も大切にしました。それを引き立て合えるのが、きめ細かくなめらかな口溶けの「こし餡」です。上品な甘みと色みも兼ね備えています。何より、おいしさを満喫できる、ちょうどよい餡の割合に気を配りました。
また、「餡ういろ」のパッケージにもぜひご注目ください。箱に使ったのは「ういろペーパー」。ういろの“はしっこ”など、商品としてきれいに仕上げる上で廃棄せざるを得ない部分を活用した紙です。その時々の廃棄物を材料としているため、紙を作るたびに風合いが異なり、たとえば抹茶が多いと少し緑がかったり、小豆や黒砂糖が多ければ模様のような点々が散りばめられたり。一期一会のパッケージの趣も、「餡ういろ」の味わいや食感と合わせて楽しんでもらえたらと考えます。
「餡ういろ」は夏期限定で販売。季節ならではの楽しみとして親しんでいただきたい新商品です。