— 工場長にういろづくりについてお聞きします。まずはご自身が大須ういろに入社した経緯から教えてください。もともと和菓子づくりに興味があったのですか。

これまで食品メーカーや飲食業など食べものに関わる仕事に就いてきました。調理師免許を持っていますし、好きな「つくる」ことに取り組んできて、結果的にたどり着いたのが和菓子です。ただ実は、ういろの原材料が「米粉」というのは、入社して知りました。今、コメ離れが懸念されていますが、ういろは日本で長く受け継がれてきたお米文化に貢献できる和菓子だと改めて思います。

— 2020年12月にデビューした生菓子「初-うい」の開発に携わりました。

原材料がシンプルなだけに、求める食感をどうつくるか、味と色をどう描くのか、そこをとことん考えました。中でも、「こどもの初」はいちごミルクやラズベリーといった初めての味に挑戦。味の一つ、いちごミルクは、通常の業務をしつつ、毎日必ず1回は試作しました。いちごはどんな形状のものを使うか、ミルクは何を使うのか、考えうる限りの方法を3カ月間試し続けたのです。ラズベリーについては求める味に到達してからも、食感は原材料の分量を加減したり、練り方の手順を変えたりと試行錯誤を繰り返しました。新製品を買って食べてくれる方の期待を裏切りたくないので、開発にゴールはありません。どんどん改良したくなる。美味しいと思ってもらえるよう、ひたすら追求します。「初」もできることを最大限に行った、これまでにないういろです。

— 一方、工場長として他の職人たちを率いる立場です。どのようにマネジメントをされていますか。

食べものは「いつも同じ」味や品質を保つことが重要です。安定したういろづくりのため、かつては職人の感覚で行っていた製造にルールを設けました。工程の手順や温度管理など、職人の経験をマニュアル化したわけです。これなら誰にとっても分かりやすく、それぞれの責任を全うできます。しかし、現在のマニュアルが最善とは限らないとも思っています。気づいていないだけで、もっと良い方法があるかもしれませんから。そこは職人みんなが考え、話し合って、変えるところがあれば変えていきたいですね。例えば、蒸したういろを一緒に食べて、蒸す時間は適切か、味や状態はベストかなど意見交換をして、何か改善点があれば前工程も含め検討を重ねます。
これ以外にも普段から、パートさんも含めみんなとできるだけコミュニケーションを取るよう心掛けています。気軽に話せるような関係があれば、困っていることや気になることにもいち早く気づいて解決につなげられますよね。

— 職人を育てるという観点では皆にどんなことをされていますか

商品について「自信を持っているか」「親しい友人に胸を張って渡すことができるか」という問いかけをします。味覚は人によって異なりますが、職人は自分の味覚をより豊かにしていくことが不可欠。そのために、敢えていろいろ食べてみるよう勧めています。自社商品だけでなく、世の中にある様々な種類のお菓子を買ってきて試してみるのです。美味しいと思ったら、どういうところがどうしてそう感じるのか、市場ではどこまでの味を出しているのか、逆に美味しくないのならその原因を考えます。そのすり合わせをして、味の感覚を鍛えていくことを大切にしています。

— 職人にはどんな人がいますか。また、和菓子職人を目指すとしたらどんな適性が必要でしょう。

職人は20代からいて、これまでの職歴は様々。経験や性格に応じて担当の工程を振り分けています。知識と経験が増えると、全体が見えて余裕が出てきますが、それまでは怒られながら覚えなさい、と言っています。学び、吸収する時期ですから。この柔軟性こそが大切で、もし和菓子職人を目指すなら早い方が良いように思います。でも年齢に関わらず、固定概念に縛られず決めつけないしなやかさと、何度もチャレンジしていく諦めない姿勢が重要です。

— 大須ういろはどのような会社だと思いますか。そこで、今後どんな展開をしていきたいですか。

大須ういろの良さは、挑戦できること。提案をして、良いと思ったものを自由に作ることができます。もちろん、社長・副社長の了承を得ますけど、基本的に任せてもらっています。
商品開発には、他の職人たちにも今後もっと積極的に取り組んでほしいので、まずは試食して自分の考えを言ったり、計量や温度調整をしたりといった段階から関わってもらっています。何事もやってみないと分かりませんから、とにかく体感できるよう巻き込んでいますね。
自分自身は、「ういろ以外」にも目を向けたいと考えています。ういろと何かの組み合わせだったり、今ある機械で作る別のものだったり。自然と手に取りたくなる魅力ある商品を作っていきたいです。


プロフィール
役職:製造部長兼工場長
仕事内容:製造全般